ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ(茂木誠)
歴史認識が非常に弱いので、今年はちょっとだけ歴史強化イヤーにしてたりするのですが、この本は個人的に非常に面白く、勉強になりました!
へー!とか、ほー!とか言ってるうちに一気読みしてしまった感じです(笑)これはシリーズもので「2」もあって読み始めていますが、この「1」はトランプおじさん誕生前までの話です。
読んだ感想をいくつか述べますと、まず「世界はシンプルだけど複雑」だということ。
シンプルというのは、基本的に歴史の元になっているのは人の感情や欲求であること。全てはそれがトリガーになっています。
複雑というのは、その感情や欲求の変数となる主体が多く、さらにいろいろ絡み合ってること。なので、1つの主体の感情・欲求の変数が変わると思わぬところに影響が出て、敵の敵は味方になったり、何かとややこしい。そういう点では、世界は複雑と言い切ったほうがいいのかな。
世界を単純化せず、システムとして理解する、って何かの本で言っていたような気がしますが、そうとらえないとこの先の世界はちゃんととらえられないですね。
こうなればすべてハッピー、なんてことはほぼないので、どこを妥協するのか、どうするのがより「マシ」な状態なのかを、いろんな変数をみながら、考えていかなあかんのだろうなと改めて思いました。
あとは、宗教とそれが及ぼす影響がようやく理解できた感もあります。
今更ながらのユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通点と相違点に始まり、キリスト教のカトリックとプロテスタントの違いからくる国民の姿勢が国造りにものすごく影響しているとか。
イスラムもスンナ派とシーア派の違いは基本として、原理主義ってなんぞやとか、原理主義にも濃淡があったりとか、原理主義といってるくせに原理を守っていなかったりとか、そしてそれが同じイスラム教徒内での争いになっていたりとか。
ISとシリアの紛争、クルド人難民の問題は、大元はアラビアのロレンスの話が原因だったりとか。
宗教ついでで言うと、宗教と権力の関係的にロシアと中国はこれからも独裁体制にしかならないとか、日本とカトリックは宗教と権力の構造が非常に似ていたりとか。
これまでは、総理大臣が天皇陛下から任命される映像をボケーっと見ていましたが、あの1シーンこそが、我々の社会が独裁体制にならず、自由を享受できている根本なんだなと気づいたり。
そして、実は個人的に一番印象に残ったのは、この本筋とは関係の薄い「おわりに」の一節でした。
皮肉な言い方をすれば、今の日中関係は日本にとってチャンスです。
中国との緊張関係が続いてくれたおかげで、日本人は自分の国のことをまじめに考え、日本を守るためにはどうしたらいいか、真剣に議論するようになりました。
日本は自国の安全のため、独自に動かざるを得なくなっています。これまで「金魚のフン」のようにアメリカに追随するだけだった日本政府が、主体的に外交を展開しようとしているのが安倍政権の特徴ですが、まともな主権国家なら当たり前の話です。
これは抽象化すると、我々の個人の人生にもそっくり当てはまるよなと。
私も去年までそうでしたが、終身雇用前提で会社に人生を丸投げして、自分の人生をどうデザインしたいのかを真剣に考えないなんて、普通に考えたらおかしいこと。
会社に丸投げして幸せな人生が得られるならまだいいですけど、定年後に「自分の人生はなんだったのか」と呆然としているといったおじさんの話はよく聞きますし、「死ぬ瞬間の5つの後悔」でも言われているように、「自分に正直な人生を生きればよかった」という後悔が後々生まれたりするんですよね。
であるならば、人生100年時代の到来はむしろチャンスじゃないかと。
これまでの「定年後は安泰」というストーリーは崩壊し、かつ100歳まで生きるとなったら、自分のこれからの人生をどうすればいいのか、自分の頭で考えざるをえません。
「今」という時点では会社に丸投げするよりも、それを考えることは大変でストレスもかかってしんどいことかもしれませんが、でも今から頑張って自分の頭で考えて生きていったほうが、「死ぬときの後悔度数」は絶対減ると思うんですよね。
AKB的にいうと、自分の人生、どこに向かって飛んでいきたいのか、そして、どう飛んでいきたいのか。
そんなことを思いがけず気づかされた本でございました。
と最後はちょっと本筋からズレましたが、世界のニュースについて、何に揉めているのか、揉めている歴史的背景は何なのか、ということに興味のある方にとってはすごくオススメの1冊だと思います(・∀・)
「その2」も楽しみです。