気ままに誤読録

著者の意図とは違うかもしれないけど、自分なりの気づきを「誤読」として紹介していく、そんな読書ブログです。

デザイン思考の先を行くもの(各務 太郎)(その2)

引き続き「デザイン思考の先を行くもの(各務 太郎)」の2回目です。

 

前回は、

デザインとは問題解決やそのための設計であって絵心やセンスではないですよ

絵心やセンスはデザインではなく、スタイリングですよ

なぜそれらが日本で混同されているかというと、戦後の2回目の「デザインの輸入」のとき、デザイン=意匠として誤って輸入されたからですよ

だから、デザインは別に絵心やセンスがない人でも、普段から慣れ親しんでいるものですよ

 

といった話をさせていただきました。

 

今日はでは、デザイン思考を実践するプロセスとはつまるところどういうものなのか?ということについて、この本で書かれていたことをご紹介します。 

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この本で書かれているデザイン思考を実践するプロセスとは、ずばり、PDCAですよ、と書かれています。

 

でもって、PDCAが少し細分化される形ですね。こんな構成です。

 

【①課題か需要かの発見(Pの1つ目とA)】

現状顕在化している課題の背後に隠れた、本質的な課題の抽出。あるいは私たちが生活者が認識していたい潜在的な課題の発見。解決策の質は問いの質に依存するということを考えれば、一番大切なステップ

 

【②解くべき課題の定義(Pの2つ目)】

①の拡散的な議論で出された課題候補の中で、一番プライオリティの高い課題を絞り込み、定義するステップ。課題を言語化する際、多義的であいまいな言葉は避け、誰が聞いても同じ絵を思い浮かべられるようなシンプルで明快な言葉選びを意識することが重要となる。

 

【③アイデア出し(Pの3つ目)】

②で言語化した課題に対して、その課題に最短距離で到達できるようなアイデアを出していく。最も単純な方法は、「重い→軽くする」といった課題の逆を目指すこと。

 

【④試作づくり(Dの1つ目)】

デザイン思考の真骨頂はここである。案ずるよりも先にまず試してみる

プロトタイプは完成品のように完璧なものを作る必要はなく、段ボールでもポンチ絵でもいい。コンセプトを他人と共有できることができる状態までもっていければミッション達成

動かないが見た目だけを本番通りに作るコールドモックアップ、外見は気にせず機能/動作をチェックするためのホットモックアップ等の手段がある。

 

 【⑤実施(Dの2つ目)】

④のプロトタイプを実際に利用してみる。

ここで重要なのは、そのプロトタイプは「どの要素を評価するためのものか」を認識しておくこと。見た目だけを評価するプロトタイプなのにもかかわらず、使い勝手の議論をしたり、機能性をチェックするためのプロトタイプに対して、フォルムの議論をするようなことはあってはならない。

 

 【⑥評価(C)】

 ⑤のプロトタイプに対するフィードバックを行う。このステップは、これまでのアイデアを捨てるためのフェーズではなく、どのようにすれば改良できるかを議論する。ポイントは、多くの人が③のアイデアを変更することで改良を施そうとするのだが、デザイン思考においては①の課題発見/抽出にその原因を見出そうとすることだ評価の結果、①の課題を再定義するところに戻るのである。

 

このように6つのステップを個別に説明されるとなんだかややこしいものに感じそうですが、それをPDCAという枠組みにはめると

 

P(①②③)

D(④⑤)

C(⑥)

A(①)

 

となって、「要はPDCAを回しているんだ」と思えば、デザイン思考も身近な存在に感じられそうです(といったようなことを著者さんは仰っています)。

 

で、ちなみに「PDCAを回す」という表現を、デザイン思考では「プロトタイピングを回す」と表現するそうです。で、ここで著者さんの言葉を借りると、デザイン思考とはつまるところこういうことだそうです。

 

すなわちデザイン思考とは結局、「消費者の求めるものを聞いてPDCAを回す」ことなのである。

 

とデザイン思考について簡単にまとめてみました。

 

ということで、前回の記事も含めて、デザインは「問題解決」であり、デザイン思考は「消費者の求めるものを聞いてPDCAを回す」ことだということがわかりました。

 

で、この「問題解決」。その問題は誰が設定するの?ということを考えると、自分ではない誰か、他人が設定した課題であり、自らが新たに掲げた問題提起や価値創造に基づくものではないんですね。

 

なので、デザイン思考は「現状のプロダクトより、さらに良いものを生み出すための仮説検証のツール」「1→10で役立つ、改善のためのツール」であり、いわゆる「0→1を生み出す、イノベーションのためのツール」ではないことがわかります

 

ところが昨今、多くの日本企業が「イノベーションを起こしたい」「0→1を強化したい」という目的でデザイン思考を導入しようとしているそうです。これは↑の定義上矛盾しています。

 

じゃあどうすればいいのか?

 

ここから先が本書のメインパートで、それこそ「デザイン思考の先を行くもの」ですね。0→1を生み出すためにはどうすればいいか。ハーバード・Dスクールでも今はこのデザイン思考の先にある0→1を強化しているそうです。

 

そのあたりについて、次回私の頭の中の雑な整理(笑)を書いてみたいと思います。