気ままに誤読録

著者の意図とは違うかもしれないけど、自分なりの気づきを「誤読」として紹介していく、そんな読書ブログです。

デザイン思考の先を行くもの(各務 太郎) (その1)

Amazonの紹介で

電通のコピーライターとして活躍してきた一方、ハーバード大学デザイン大学院にて都市デザイン学修士を修めた建築家でもあるという異色の経歴を持つ著者の視点から、日本人が抱えてきた“デザイン”という言葉への誤解を紐解くとともに、デザイン思考の先を行く新たな手法の秘訣を紹介します」

というこの本、確かに非常に面白く、勉強になりました。1回じゃ書ききれないので、テーマ別に3回に分けて書こうかなと思います。

この本と先日の「ビジネスの限界はアートで超えろ!(その1)(その2)」と合わせて読んだことで、デザイン、アートといった感性的な側面からビジネスをとらえる考え方について、かなり理解が進んだ気がします。

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今日は、日本人の「デザインの誤解」に関することについて。

デザイン思考に少しでも触れた方であれば、「デザイン=問題解決」ということを理解されているかもしれませんが、日本ではデザインという言葉を使うと、「絵心」「センス」「クリエイティビティ」という言葉と一緒に使われることがあります。でもデザインと、センスやクリエイティビティは全く関係がないとのことです。

ではデザインは何かというと、とにかく新しい視点を提供すること、新しい課題を発見することだそうです。

それをわかりやすく説明してある例がありますのでご紹介します。

例えば傘について。傘というプロダクトは、「雨が上空から降ってくる」という問題に対して、「手で持てる軸の先に膜をつけて水滴をさえぎる」という解決の糸口を見出したもの。ここまでがデザイン。膜の模様や、柄の形状のことはデザインとは呼ばない。

同じく靴について。靴というプロダクトは、「地面がごつごつとして歩きにくい」という問題に対して生み出された「分厚い靴底と足を布のバンドで固定して逃げないようにする」という解決策。ここまでがデザイン。表面の生地の柄や素材は、デザインとは呼ばない。

そしてデザイン力を改めて定義しています。

つまりデザイン力とは問題解決力のこと。あくまで「問題を発見し、解決の糸口を示す」能力なのである。私たちが普段「デザイン」と聞いて想像する「オシャレなグラフィック」等は、厳密にはデザインの範疇ではない。絵心、造形力、センス、クリエイティビティは一切関係ないのである。

じゃあ絵心やセンスは何と呼べばいいかというと、本来は「スタイリング」という独立した言葉が与えられているのだそうです。日本ではそれらをひとまとめに「デザイン」と呼んじゃっているので、「デザイン思考」という言葉を聞いても「いやー、俺絵心とかセンスとかねぇしなぁ」となんだか遠い存在のように思ってしまう人が多いんじゃないかと思います(はい、僕のことです)。

では、なぜ日本では「問題解決する→設計」という意味と「絵心、センス→スタイリング」という意味がごっちゃになって「デザイン」と認識されてしまったのかというと、「輸入」に起因しているとのことです。

「デザイン」が輸入されたタイミングは2回あるそうで、1回目は戦前。そのときは「設計」という意味で本来的な「問題解決」の文脈で輸入されたそうです。そして2回目は戦後、「意匠=スタイリング」の意味で輸入されたそうです。先日アートについても同様の事例を書きましたが、ここでも「言葉をどのような意味で輸入したか」が、後世ものすごく影響を与える事例が出てきた感じですね(^^;)

そういうことを理解すると、まず我々は「デザイン力」とは「問題解決力」であり、「設計力」であると捉えなおし、絵心とかない人でも実は自然とやっていること、そんなに遠くの存在ではないこと、ということを認識するところからスタートする必要がありますね。

で、よくよく考えたらですね、私の前職はシステム屋さんだったわけですが、システムを作る工程で、BD、DDといった言葉を普通に使っていたんですね。BD=基本設計、DD=詳細設計。ではBDのDは何?というとデザインですね。なんや、使ってたやんけ。何も考えずにぼーっとBD、DDと言っていたので気づきませんでした。チコちゃんに怒られそうです。

ということで、まずはデザインの定義。「デザインは問題解決」と聞いたことはありましたが、それは具体的にどういうことなのか?一方でなぜ「絵心・センス」と勘違いしていたのか、そのへんの原因を理解でき、

「デザインというのはもともと自分がやっていた、自分にとって身近なもの」

という気づきを得たことが、この本を読んでよかったなと思った1点目でした。

そして次回は、「じゃあデザイン思考のプロセスって具体的にどういうもの?」について少し深く掘ってみたいと思います。