気ままに誤読録

著者の意図とは違うかもしれないけど、自分なりの気づきを「誤読」として紹介していく、そんな読書ブログです。

(前編)NEW ELITE(ピョートル・フェリクス・グジバチ)を読んで著者の激動の過去に思いを馳せた話

いわゆる” Google流”の様々な本を出されているピョートルさん。

この本が私にとっての初めてのピョートル本でしたが、「はじめに」の部分だけでいろいろ感じるところがあったので、まずは前編として「はじめに」の部分について書いて、本論については後編で書きたいと思います。

  

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ピョートルさんのいう「変化に備えろ」は重みが違う

さて、ピョートルさんですが、1975年生まれということは私と同い年なんですね。

 

生まれは共産主義時代のポーランド。そして共産主義が倒れるというベルリンの壁崩壊を14歳で迎えられます。私は平和な日本からあの光景をテレビで見ていたわけですが、同い年なので私も当時14歳。中2ですね。あのとき、同い年で、あの激変のど真ん中で過ごされていたピョートルさん。日々どんなリアルな光景が繰り広げられてたんだろう?という思いが湧いてきます。

 

「はじめに」で結構書かれていますが、当然ながら体制は共産主義から資本主義に代わりました。で、資本主義になったら幸せな世界が来たのかというとそうではなかった。ピョートルさんの町で共産主義時代に経営されていた国有企業、5000人規模の町で1000人を雇用している、まさにその町を支える企業でしたが、ドイツ企業に売却。資本主義に経営が変わるので給料があがるのかと思いきや、ドイツ企業は工場をたたんで、ドイツ製品を売りに来る始末。工場で働いていた人は一気に職を失い、その町では失業率がいきなり100%近くに跳ね上がったそうです。

 

そんな激変社会において、どういう意識で生きていくか。

 

ピョートルさんのお兄さんは、体制が変わり、仕事を失い、世界が変わってしまったとき、人生には意味がなくなったと考え、アルコール依存となり、自動車事故で亡くなりました。一方のピョートルさんは逆に、世界が変わって新しい波が来るなら、その波にうまく乗るためにはどんな立ち方をすればいいか、考えていたとのことです。

 

この本におけるピョートルさんのメッセージとして、「変化に備えて対応する」というものがあります。これからのVUCAの時代、変化に備えていきましょうと、いわば「正論」を例えば私のような人間が受け売りで言ったとしてもどこか薄っぺらい感じがしますが、共産主義から資本主義への激変の苦しみを経験されているピョートルさんがその言葉を発すると、すごく重みを感じます。変化を拒んだ兄はなくなってしまったという辛い体験もその言葉に乗っているのではないかと思うと、さらに重みを感じます。

 

そして、その「変化への対応」のスタイルとしては、

「変化を受け入れ、変化を乗りこなし、変化を楽しむ」

ことが大事であるとし、それこそがNEW ELITEの在り方だと仰っていて、そのための各論がこの本の本論部分になります。

 

NEW ELITEとは

NEW ELITEとはどういう人かを語る前に、その反対語となるOLD ELITEとはどういう人かを認識しておくとわかりやすいです。

 

OLD ELITEとは、固定化された地位のようなものです。

たとえば、

  • 有名大学を卒業したら、学歴エリートとして「〇〇大学卒」という肩書のもとに生き続ける
  • あるいは、いったん大学の教授になれば、ずっとアカデミズムの世界でエリートとしての地位が保証される
  • 一部大手企業に就職すれば、エリート社員として居続けられる

といった具合です。

でも、裏を返せば、これらOLD ELITEには成長の余地がないとピョートルさんは言っています。一度上り詰めてしまったら、それ以上の伸びしろがないので。

 

そしてこれからの時代をリードする人として、「これまでとは違うエリートの定義づけ」ができるとし、それをNEW ELITEと言っています。

 

NEW ELITEとは、「持続的に成長して、成功している人」のこと。

たとえば、

  • 会社員だった人が努力の末に起業の夢を実現するというのは、それがどれだけささやかな事業であっても、見上げるような成功である
  • 小さな会社でも、転職してやりたかった仕事に就けたのなら、やはりそれも成功である
  • 時間軸的にずっと成功していなくても、一定期間で区切った成長度合いで比較すれば、特に成功者とみなされていない人の中でも、実は成功者が存在する

といった具合です。

そして、彼らが成功者とみなされる時代が遠からずやってくるはず、と仰っています。※そちらの生き方を目指し始めた私としては、とても勇気がもらえます^^;

 

また、以下のようなマトリクスで分類もしています。

 

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※本書より転記

 

 

ちなみにピョートルさんもOLD ELITEだった

ピョートルさんもGoogleで働く前はモルガン・スタンレー証券という”強欲資本主義”の会社のエリートとして働いていたので、上述のNEW ELITE的な人たちをどちらかというと蔑んで見ていたそうです。

 

ピョートルさんは才能心理学的視点でいうと「なかった人」(幼少期、厳しい時代を過ごした人)。「なかった人」で才能を開花させる人というのは、「なかったもの」を手に入れる、もしくは自ら生み出すために、感情エネルギーが生まれ、ことを成し遂げる傾向にあります。

 

ピョートルさんは、お金がないために高校を辞めてドイツへ出稼ぎに行った際、そこでのたった一日の労働で父親の給料の2~3か月分のお金を手にしたことに、とてつもない衝撃を受けます。このとき、「このままではダメだ、自分自身が変わらなければ」と強く思ったそうです。そこから必死に稼ぎながら勉強し、大学院に進学。その後の経緯は詳しく書かれていないので推測になりますが、そこからも頑張り続けて、10代のときに衝撃を受けた資本主義側のOLD ELITEに上り詰めたのだと思います。

 

そしてOLD ELITEからNEW ELITEへと価値観が変わったきっかけがGoogleへの入社面接だったそうです(当時34歳)。

 

何が言いたいかと言いますと、この本を書いているピョートルさんもそうだったんだから、「今、OLD ELITEの人もこれからNEW ELITEになれるよ」という暗黙のメッセージが含まれているようで、これは勇気づけられます。

 

 

以上、「はじめに」の部分について感じたことを徒然なるままに書いてみました。

 

後編では、NEW ELITEになるためのHOWの部分について、印象に残ったところを書いてみたいと思います。

 

ということで、今回はこのへんで。