気ままに誤読録

著者の意図とは違うかもしれないけど、自分なりの気づきを「誤読」として紹介していく、そんな読書ブログです。

海馬 (池谷 裕二・糸井 重里 )を読んで歳を取ることに勇気がもてた話

先日荒木マスターのブックカフェにて、バイオリニストの佐原さんが「私の人生の一冊」というテーマで紹介されていたのがこちらの本。
脳の仕組みは私も関心のある分野なので読んでみました。
 
この本が刊行されたのは2002年なので、17年前の本ですね。
 
著者は池谷裕二さんと糸井重里さん。
 
池谷裕二さんは、当時東大薬学部助手で脳の海馬を研究されていた方。
 
糸井重里さんは、もう説明不要ですね。
 
この本はお二人の掛け合いで進んでいく形なのですが、例によって糸井さんの噛み砕き力によって素人にも分かりやすい内容になっています。
 
ということで、いつものように個人的に印象に残った部分にフォーカスして書いてみました。

 

【↓ ブックカフェの該当回はコチラ ↓】

voicy.jp

 

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1.海馬の重要性

みなさん、「脳の機能って何?」と聞かれたらどう答えますか?

 

池谷さんの説明によると、脳の機能は煎じ詰めると2つしかないそうです。

それは

 

「情報を保存する」

「情報を処理する」

 

この2つです。

 

では、この2つのどちらが大切かというと、

 

「情報を保存する」

 

つまり、記憶のほうになります。

記憶がなければ処理もしようがないからですね。記憶がなければ言葉もしゃべれないし、しゃべれなければ思考には制限が出てきます。

あらゆる「情報処理」も、その「処理方法を記憶」して初めて可能になります。

ということで、

 

脳の機能としては、「情報の保存=記憶」が大事

 

なんですね。

 

そして記憶を扱っている部位が、この本のタイトルの「海馬」でございます。

 

ちなみに海馬というのは脳のどのへんにあるかというと、脳の奥の真ん中のほうですね。大きさとしては小指くらいの細長いもの。それが左右に2つあるようなイメージです。

 

そして海馬の機能をもう少し詳しくいうと、「記憶の製造工場」の役目を果たします。 

 

「製造工場」というのは記憶は海馬の中に蓄えられているわけではなく、他の部位に記憶を蓄えているんだそうです。ゆえにあくまで製造工場であって、格納庫ではないんですね。

 

だから仮に海馬がなくなってしまうと、新しいことを覚えられなくなります。

※海馬がなくなる前のことは覚えています(別の格納庫に残っていますので)

 

そして製造工場としてどのような機能を果たしているかというと、

 

情報の要・不要を判断している

 

のだそうです。

 

と、いろいろ書きましたが、改めてまとめますと、脳の大事な機能である「情報の保存」において、大事な役割を果たしているのが海馬、ということです。

 

※情報の仕訳というと、「脳幹網様体賦活系(RAS)」との関係性はどうなっているんだろう?という興味がわきますが、今回はその辺の話は割愛します。

 

2.海馬は増やせる

脳の神経細胞は生まれたときが一番多くて、あとはどんどん減っていく一方、という話を皆さんも少なからず聞いたことはあるのではないかと思います。

 

だけど不思議なことに、海馬は他の脳の細胞と違って、次々と生み出されるんだそうです。

 

次々と死んでいくスピードも速いが、どんどん生まれてもいる。つまり神経が入れ替わっているんですね。

 

ということは、生まれるスピードと死ぬスピードのバランスが大事で、

 

生まれるスピードの方が速ければ海馬は全体として膨らんでいき、死ぬスピードが速ければ海馬はしぼんでいく

 

ということになります。

 

そして先ほど書いたように、海馬は情報の仕訳という非常に大切な役割を担っているので、

 

海馬が発達して、神経細胞の数が多くなればなるほど、たくさんの情報を同時に処理できて、たくさんの情報をストックできるようになる(すなわち記憶力が高まる)

 

ということが言えます。

 

 

3.どうやって海馬を増やすか

ではどうすれば海馬の神経細胞を増やせる、すなわち神経細胞が生まれるスピードを上げられるのか。それは

 

「情報として受け取る、刺激の量」

 

がキモとなります。

 

刺激がある環境に身を置き続ければ海馬は大きくなり、何も変化のない環境に身を置き続ければ海馬は小さくなるのだそうです。

 

なので、定年後に何もすることなく、家でゴロゴロするおじさんなどは、海馬の観点からすると最悪ということですね ^^;

 

この本にはそこまで書かれていませんでしたが、自らに刺激を与え続けて、海馬を増やしているか、そうでないかは、なんとなく老け込み方にも大きく影響しているんじゃないでしょうか。

 

そして海馬にとって一番の刺激になる情報というのは

 

「空間の情報」

 

だそうです。

 

そういう意味で「旅」というのは、空間の刺激がずっと続くものなので、非常に良質な刺激といえます。

 

で、旅といえば、「人・本・旅」でおなじみの出口治明さんがすぐ頭に浮かびます。

 

「人・本・旅」で常に刺激を受け続けまくって、海馬が異常に発達したおじさんが出口さんなのか、と考えるとすごい納得感があります 笑

 

一方でネットは、基本、目と耳からの刺激なので、刺激の強さとしては弱くなってしまいます。ですが、VRが普及するとそれも克服できるかもしれませんね。

 

4.30歳を過ぎてから頭はよくなる

話は変わって、脳の特性があるタイミングで大きく変わるというトピックを1つ。

 

脳の編成は、20代が終わるところまでの状態でだいぶ落ち着いてくるとのことです。

 

20代までは、作ったり壊したりの繰り返しで、脳は再編成されながら柔軟に動いていくらしいのですが、30歳を過ぎるとワインが熟成していくような落ち着きが出てくるとのこと。すでに構築した脳内ネットワークをどんどん密にしていく時期に入るんだそうです。

 

ということで、脳は30歳くらいを起点に別の動きに入ります。

 

どのように変わるかというと、

 

30歳を過ぎると「つながりを発見する能力」が非常に伸びる

 

のだそうです。

 

もう少し丁寧にいうと

 

一見関係のないモノの間に、以前自分が発見したものに近いつながりを感じる能力が、30歳を超えると飛躍的に伸びる

 

とのことです。

 

これは言い換えると、具体を抽象化し、共通点を見出す能力ともいえるんじゃないですかね?

 

若い時にはつながりを発見できる範囲が狭いが、歳を取っていくにつれてつながりを発見する範囲がすごく広がって、その範囲は30歳を超えたところで飛躍的に増える。

 

今まで一見違うと思われたものが、実は根底では、つながっている

 

ということに気づき始めるのが30歳を過ぎた時期なんだそうです。

 

ということを踏まえると、ここからは私の誤読ですが、

 

20代の若者が30代、40代の人たちの推理力や仮説構築力をすげーと思うとき、俺はなんでそんな発想できないんだ?と落ち込む必要はない

 

ともいえるんじゃないでしょうか。

なぜならそれは脳の状態の違いに起因するものだから。

 

逆もしかりで、

 

暗記力がワカモノより劣るからといって30代以降の人が落ち込む必要もない。

 

なぜなら情報をインプットしていく暗記物が得意なのは20代までの脳だから。

 

で、ここが大事だなと思ったのは、

 

30歳くらいから脳はそのように機能が転換するけど、それを活用できる人と活用できない人の二極化が起こる

 

ということ。

 

これまでの、つまり20代までの脳の使い方に固執してしまう人は、そのせっかくの「繫がり力」が伸びないのだそうです。

 

これは私の勝手なイメージですけど、伸びない人というのは、

 

30代以降になっても論理的思考力を磨かずに、ひたすら情報を暗記しようとする人

 

という感じでしょうか。

 

論理的思考力は、言い方を変えると「話のつながり」をみつけていく力。

 

なので、ものすごく抽象化すると、30代以降は考える力を高めていくのがより脳にフィットした使い方なんだろうなと思いました。

 

そう考えると、MBAに通うのも30代になってからのほうがよさそうな気がします 笑

 

5.まとめると

気になったポイントを絞ったつもりですが、やはり長くなってしまいました(^^;)

 

さいごに、この本から私が受け取ったメッセージをまとめてみますと

 

歳をとっても、新たな情報という「刺激」を与えることで海馬を増やすことができる

海馬が増えることによって、記憶できる情報が増える

そして、30歳を超えると、つながりをみつける力が高まる

だから、まずは「記憶情報」を増やしていくために、危険を感じない状態を確保したうえで、どんどん自分に刺激を与えていこう

そのうえで30歳以降強化された「つながりを見つける力」を積極的に使い、好奇心をもってどんどん「つながり」を発見して行こう

そしたらたぶん、カッコいい大人になれる!(希望!)

 

どうでしょう?

特に、私と同じ40代の同士のみなさん、この脳の話、勇気がもらえませんかね?

 

ということで、ともに脳を鍛えていきましょう!