人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」(田坂広志)
田坂師匠の本でございますが、実はこの本、そのタイトルから若干抵抗があり、いままで読まずにいました。
何故抵抗を感じていたかというと、タイトルから想定するに、「場面場面に応じて異なる必要な人格を表に出して、うまいこと対応していきましょう」みたいなことが書かれているのではないか?と思い、それはややもすると、カメレオンのようにひたすら環境に適応することを追求することで、自分が何者かがわからなくなってしまい、「他人モードの人生」を生きてることに繋がってしまうのではないか?と感じていたからです(読んでいなかったので、あくまで妄想です)。
ただ、先日読んだ「運気を磨く」の内容をより深く理解するための1冊としてこの本が紹介されていたので、改めて読んでみました。
読んでみた結果、確かにそうだなぁと思うところ、そこは意見を異にするかなぁというところの双方ありつつ、やはり勉強になるなぁと思うところがいろいろあったので、頭の整理がてら書いてみたいと思います。
まず前提として、多重人格の定義から
念のため申し上げておきますと、ここでいう「多重人格」というのは、いわゆる「精神の病」という意味合いではないです。
田坂さんは多重人格の「マネジメント」が大事だと仰っており、つまり、意識的に「人格」を変えることをコントロールする、ということですね。
そしてその人格というのは、「温厚な人格」であったり、「緻密な人格」であったり、ときには「厳しく接する人格」であったり、そういう意味合いです。人の精神的な性質、特徴のような感じですね。
そのようなあらゆる人格を全ての人は本来持っているという前提に立ち、そのようなさまざまな人格が自分の中に眠っていることに気づき、それを置かれた状況や場面に応じて引き出すことで、才能を開花させていきましょう
というのがこの本のメインメッセージだと私は理解しました。
多重人格のマネジメントによる才能開花とは
多重人格による才能開花のイメージをカンタンに掴んでいただくためには、本書に書かれていた田坂さんの例が分かりやすいのでご紹介しますと、こんな感じです
田坂さんが大学院を卒業して就職してしばらくの間、「研究者モード」で働いていた。それは無意識にそうなっていたのだが、大学院時代の研究者モードのまま働き続けていたということ。
すると、ある日上司から「職場の仲間から、お前は近寄りがたい存在だと言われているぞ」と指摘を受ける
田坂さん自身はそんなことに全く気付いていなかったが、それはそれで問題なのでどうしようかと考える
すると、田坂さん自身、仕事以外の場所では、「フランクで明るいモード」で普通にすごしていることに気づく。
そこで仕事中もときどき「フランクで明るいモード」に切り替えたところ、周囲の同僚と関係性がよくなり、仕事もうまく回っていくようになった(才能が開花した)
このように、もともと自分に備わっている「人格」を必要に応じて引き出しから出してくることで、才能を開花させていくということですね。
そしてここで問われるのは、必要に応じて使い分けるという「マネジメント力」であり、そのマネジメント力を発揮するには精神的体力が必要だと田坂さんは仰っています。
どんなときも変わらず1つの人格で対応する人、思い返すと結構いますよね。当然自分自身も( ̄▽ ̄;)
そういう人は、精神的体力がない人なんだと田坂さんは(やさしく)喝破されています。なぜかというと、1つの人格でずっと過ごす方がラクなんですよね。いちいち「今どの人格をだそうか」と瞬時に考えるよう必要ありませんから。
ということで、コレができるようになるためには、やはりトレーニングが必要なんですね。
自分の中に隠れている人格の「3つのレベル」
この本でなるほどなーと思ったのは、普段表に出てこない、隠れた人格には3つのレベルがあるということ。
この3つの視点から多重人格のマネジメントの「元ネタとなる素材」をまず集めてきましょう、ということですね。
1.表層人格
これは
ある状況では隠れているけど、他の状況ではすでに表に出ている人格
です。
これはイメージしやすいですよね。
代表的なものは、仕事中、友人たちにみせる人格、家庭内で見せる人格は往々に封印していると思います。これらが仕事中という視点にたったときの、隠れた表層人格ですね。
2.深層人格
これは
現在は隠れており、表に出てきていない人格だが、置かれている立場や状況が変わったり、意識的な努力をすることによって、自分の中に育ち、表に出てくる人格
です。
これもイメージしやすいかと思います。
いわゆる「立場が人を育てる」のケースですね。
ある役回りに抜擢されたことでリーダーシップ能力が開花するとか、だらしなかった夫が子供が生まれたことで父親としての自覚が芽生えるとか、あの手の話です。
3.抑圧人格
これは
何かの理由で、強く抑圧されており、心の奥深くに抑え込まれ、なかなか表に出てこない人格
です。
たとえば幼少期に親から虐待され、甘えることが許されなかったため、強く抑圧してしまった「他者に甘える人格」などがその一事例です。
それだ「3つのレベルの人格」に気づくには?
隠れた人格のレベルが3つあることはわかりましたが、ではどうしたらそれらに気づき、自覚できるようになるのか。
表層人格に気づくには?
職場での人格、家庭での人格、友人たちと過ごしているときの人格、その他コミュニティでの人格、それぞれの場面でどのような人格を出しているか、これは自分自身振り返ることで分かることも多いのではないかと思います。
ただし、、、、
「自分のことは自分が一番よく分かっていない」とはよく言ったもので、自覚できていない人格も結構あったりします。
「あなたってこうだよね」「あなたってこう思われてるよ」という信頼のおける他者の意見にもぜひ耳を傾けるようにしたいですね。
この「自分で気づく」「他者から言われて気づく」の両面から、気づいていきたいものです。
深層人格に気づくには?
これはですね、田坂さんの提案は、
苦手なことをやってみる
です。
たとえば「これは苦手なんだよなー」と思い込んでいて避けていた仕事をやってみる、とかですね。
カネとか数字とか嫌いなんだよなー、と言いながらも、やってみると「数字の関連性を読み解くことを通じて、物事のつながりを追求する能力が開花する」なんてことがあるかもしれません。
もちろん一方で、「やっぱ苦痛でしかない」「向いてない」と再認識する場合もあると思います(笑)
失敗が許される若いうちは、深層人格を発見するかもしれない、という目的も持ちつつ、いろいろ取り組んでみるのがよいのではないでしょうか。
抑圧人格に気づくには?
これはですね、難しいです^^;
いわゆる「心に蓋をしている」「メンタルブロック」に関係する部分ですので。
これは自分自身では気づきにくく、本書でも書かれていますが、カウンセリングやコーチングといったサポートを通じて発見していくのがいいんじゃないかなと思います。
私もコーチングや才能プロファイリングをしている中で、こういうケースに遭遇することもたまにあります。
抑圧された中に、チラっと光が見えるんですよね。
そしてご本人は、その光が「いけいないこと」「意味のないもの」という風にいわば洗脳されて蓋をしてしまっているんですよね。
あの光をなんとか光らせてほしい、と思いながら接しますが、これにはなかなか時間が必要だったりします。
またこれに気づく視点としては、「気に食わない人」をチェックするという方法もあります。
深層意識では、「本当は自分もあの人のように振る舞いたい」のに、「それはやってはいけないこと」と抑圧しているがゆえに、「やってはいけないことをやっている、あの人はけしからん」という感じでむかつくわけですね。
「気に食わない人」の全部が全部それに当てはまるわけではないですが、中にはそういう形で当てはまる人もいる、ということです。心理学でいうところの「シャドー」の概念ですね。
さて、ここのパート、流れ弾に当たった人はどれくらいいるでしょうか (笑)
さいごに、感想
とここまで書いてきて、私の頭も整理されてきました。
で、本書の内容に関する感想として、一部意見を異にするなぁという部分は、
誰しもがあらゆる人格(才能の源泉)を備えている
という部分ですね。
私は、やはりストレングスファインダーのように、才能が発揮できる部分、発揮できない部分はそれぞれあるというスタンスです。
で、意見が一致するのは、「私の才能はこれだ」「私が向いていることはこれだ」と決めつけてしまうことで、他の才能が開花することを抑止してしまう恐れがあること。
昨日もストレングスファインダーを活用したコーチングを行ったのですが、
・1~10位は、才能発揮のコア部分
・11位~15位は、「たまに持ち出す」ことで才能発揮を援護射撃する部分
・30位~34位は、とっとと諦めて誰かにお任せする部分
という捉え方でサポートしています。
そう考えたとき、田坂さんがおっしゃるように、たとえばストレングスファインダーで上位5つだけとらえて、それ以外の才能はない、というふうにしてしまうと、6位~15位の才能を捨ててしまう形になるんですよね。
それは非常にもったいない。
そういう視点では、この「多重人格」という視点、超アグリーでございます。
という感じで私の頭がすっきりしたところで、今日はこのへんで!