「ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由」を読んで自立の意味を考える
「読まなければ!!」とずっと思いながらも積読だったこの本、GWに実家に帰って両親とそこそこ多くの時間を共有できたこともあり、読んでみました。
まずトータルの感想でいうと、非常にありがたい本でした。20年以上介護に取り組まれている酒井さんの実体験ベース&介護関連事業を営むお仕事ベースのお話から、今後いつか、急に来るかもしれない介護生活に向けて、バイブルとしてとっておきたい本です。
そして、私にとっての一番の学びは「自立」の意味でした。
1.よく言われる「自立」とは
みなさん、「自立している人」というとどういうイメージを持たれるでしょうか?
回答はそれぞれかと思いますが、
「自分の足で立つことができる人」
「自分のことは自分でできる人」
「他人の助けなく、いろんなことができる人」
という理解の方も多いのではないでしょうか。
また、自立と反対の概念で「依存」という言葉もありますが、
「自立している人=依存していない人」
という印象もあるのではないでしょうか。
2.別の切り口でみた「自立」とは
ですが、、、
ちょっと切り口変えて考えてみると、人は1人では生きていくことはできないので、
「自立している人も必ず誰かに依存している」
ともいえるんですよね。
たとえばサラリーマンもフリーランスも、「経済的に自立している人」と捉えられていると思いますが、
「サラリーマンであれば、雇われている会社に依存している」
「フリーランスであれば、仕事の発注先に依存している」
といえるわけです。
そして、著者の酒井さんは本書の中で
「自立=多くの依存先を確保している状態」
という意味あいで定義されています。
これは本当にその通りだと思います。
この定義でとらえると、たとえば現在サラリーマンで経済的に自立できている人も、終身雇用で雇用先が倒産したらどこにも転職できない、なんていう状態ですとそれは「1社に依存している」という自立とは程度遠い状態となります。
一方で、今の会社にクビを切られてもいつでも転職できるし、という人は「依存先が複数ある」ということで自立度が高い状態と言えますよね。さらに国内だけでなく、国外でも働けるよ、となればより自立度は上がりますし、さらに畑を持っていていざとなったら時給自足も行けるよ、となれば・・・(以下略)
3.介護の文脈で語られる「自立」とは
では、介護について。
「介護とは自立支援」と言われます。この文脈での「自立」とはどういう状態を指すのか。そこを間違えると大変なことになるということを、この本は冒頭で教えてくれます。
ここまで読まれた方はもうお気づきだと思いますが、介護で語られる自立支援とは
「介護される人が依存先を増やしていくこと」
です。
では、その真逆のスタイルの介護とはどんな介護かというと
「親の介護を(子である)自分が全て行うこと」
です。そして、その先にはこのような悲しいことが待ち構えているとこの本には書かれています。
「自分の親の介護なのだから、すべて自分がやってあげたい」と考える善人ほど、悲惨な介護に突入しがちなのです。ニュースになるような介護をめぐる虐待や殺人は、むしろ、自立の定義を誤解した善人が起こしているという認識が求められます。
善人ほど、悲しい状況が起きてしまう。この事実を胸に刻んでおきたいと思います。
4.自分はプロジェクトマネージャーであれ
介護の目指す状態が「依存先を増やし、自分の自由を確保すること」であるならば、介護における自分のミッションは何かというと、
「プロジェクトマネージャーに徹すること」
大切な親だから、現場に入って直接介護したい、という心の引力を感じつつも、その引力をある意味断ち切り、
「自分の役割はプロジェクトマネージャーなんだ」
と強い気持ちを持つこと。
それが来るべき介護生活に向けた、一番の心の準備だなと思いました。
と、いろんなことを学べましたが、そのうえで実際はどうなのか。
今回発足させたコミュニティでも、経験者の方からいろいろ学ぶ機会を設けたいなと思いました。
ということで、私と同じく、これから介護を迎える方には非常にオススメの一冊だと思います。